「挑戦し続けるグリコの「創意工夫」」 | 講演会レポート | 大阪商業大学 総合交流センター

講演会レポート

「挑戦し続けるグリコの「創意工夫」」

江崎グリコ株式会社
グループ広報部 部長
江崎記念館 館長
岡本 浩之

江崎グリコ株式会社
グループ人事部
キャリアサポートグループ
グループ長
相川 昌也

皆さんは「江崎グリコ」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

ポッキー?ビスコ?アーモンドチョコ?ジャイアントコーン?プッチンプリン?...色々な商品を思い浮かべる人もいれば、道頓堀の看板を連想される方や、オフィスグリコと答える方もいるかもしれません。

これらは、江崎グリコの創業から長年にわたって脈々と受け継がれている「創意工夫」のDNA によって生み出され、引き継がれてきているものです。

今日はこの創業以来脈々と受け継がれてきている「創意工夫」についてお話したいと思います。

江崎グリコの創業者である江崎利一は、佐賀県蓮池村(現在の佐賀市蓮池町)に生まれました。大阪のイメージが強い江崎グリコですが、創業者は佐賀県の出身だったのです。

利一の実家は薬種業を営んでいましたが、決して裕福ではありませんでした。父は非常に面倒見がよく、近所の人の借金の保証人になったりしていたので、利一が19 歳の時、父が亡くなった際には、結構な額の借金がありました。

利一は薬種業とともにその借金も引き継いで返していかなければなりませんでした。

そのため利一は、薬種業に加えて代書屋も始めました。税金の早見表を作るなどさまざまな工夫により、利一の代書屋は「親切で安い」と評判になり、非常に繁盛したそうです。

またある日、葡萄酒の空き瓶を集めて大阪へ送り返しているのを見て、「葡萄酒を樽のまま輸入してここで瓶に詰めて売ったほうが合理的では」と思い、葡萄酒業を開設。これが大いに当たり、利一は実業家として成功をおさめました。

そうしたある日、薬の行商で早津江川の河口近くを通りがかったとき、牡蠣を鍋で煮ている現場に出くわします。当時有明海で採れた牡蠣は、一度鍋で煮た後乾燥させて中国などに輸出していました。

大きな鍋で牡蠣を煮ている様子を見ていた利一は、牡蠣にはグリコーゲンという栄養素が多く含まれているという記事を思い出し、「この鍋の煮汁にはグリコーゲンが含まれているのでは?」と思い、その煮汁を分けてもらって持ち帰りました。その煮詰めた牡蠣エキスを九州大学に送って調べてもらったところ、やはり多くのグリコーゲンが含まれていることがわかりました。

「このグリコーゲンを使って、何か社会に貢献できる事業ができないか?」と考えていた頃、利一の長男が腸チフスにかかってしまいました。衰弱して食事も喉を通らない長男をみて利一は医者と相談して、牡蠣エキスを少しずつ与えたところ、無事に体力を回復し病から復活することができたのです。

このことから利一は、グリコーゲンを使って子供たちが元気に健康になる事業を行おう!と決意し、当時の代表的なお菓子であったキャラメルにグリコーゲンを入れることにしました。

これが江崎グリコの創業の商品「栄養菓子グリコ」の誕生にいたるストーリーです。

そして利一は、「栄養菓子グリコ」の発売にあたり、5つの創意工夫を施したのです。

① 商品名「グリコ」

商品の名前については、グリコーゲン入りのキャラメルであることから、普通であればグリコーゲンキャラメルといった名前を付けるところですが、利一は「これはキャラメルではなく栄養菓子という新しい商品である」「名前は呼びやすい短い名前にするべき」と考え「グリコ」としました。濁音(半濁音)で始まり、"コ"で終わり、総画数も末広がりの8画の商品名は、その後も「ビスコ」や「パピコ」といった商品に受け継がれています。

② パッケージの色
当時キャラメルは子供たちに大人気で、森永ミルクキャラメルがその代表格でした。他にも数十社がキャラメルを販売していましたが、ほとんどが森永ミルクキャラメルを真似た黄色いパッケージでした。しかし利一は「同じような色では売り場で目立たない」と考え、鮮やかな赤色にしたのです。
③ キャラメルの形
当時売られていたキャラメルはすべて四角いものでしたが、利一は「子供の口に入れるのだから角がない方がいい」とハート型にしたいと考えました。当時の技術ではキャラメルをハート型に打ち抜くことは不可能で、ハート型のキャラメルを作る機械もありませんでした。しかし利一は決して諦めることなく、苦労の末、自分でハート型にキャラメルを打ち抜く機械を製作してしまいました。
④ トレードマーク
商品を発売するにあたっては、象徴となるトレードマークが必要と考えた利一は、家の近所の八坂神社で考えあぐねていました。その時、神社でかけっこをしていた子供たちがゴールする際に両手を高々と上げている姿を見て「これだ!」とひらめき、すぐにそれを図にして近所の小学校に持っていき、花や象、蝶などのマークと一緒にイメージ調査を行いました。そしてしばらくしてもう一度同じ調査を行い、一番イメージがよく、記憶にも残りやすいということで、ゴールインマークを採用しました。当時はまだ「マーケティング」の概念がなかった時代ですが、既に利一はマーケティング調査を実施していたのです。
⑤ キャッチフレーズ
商品を販売するには、商品の特徴を端的に伝えるキャッチフレーズが必要と考えていた利一は「一粒300 メートル」というキャッチフレーズをつけることにしました。当時佐賀で売られていた大きさをウリにした飴に「博多まで」というのがあり、それにヒントを得たとの話もあります。なぜ300 メートルだったのかについては後日、「100 メートルだったら少なすぎるし、500メートルだと大げさ。300 メートルくらいがちょうどよかろう」とインタビューに答えています。実際一粒のグリコには、成人男性が300 メートル強走れるだけのカロリーが含まれていました。

こうした様々な工夫を凝らした仕掛けを施した自慢の商品を完成させた利一は、「商売をするなら大都会・大阪!」と考え、親戚の反対を押し切って親族と一緒に大阪に引っ越し「江崎商店」を設立してグリコの商売をスタートしました。

そして販売に関しても様々な創意工夫を凝らしていきます。

三越での販売へのこだわり

いくら商品に自信があっても、九州から出てきて知名度もない会社の商品は簡単には売れません。そこで利一は「有名店で扱っているとなれば他の店も扱ってくれるはず」と考え、当時最も信頼のあった大阪の三越百貨店に置いてもらう交渉を行いました。断られても断られても諦めない利一の情熱に根負けした三越の担当者は「とりあえず置いてみたらどうだ...」と取り扱いを認めてくれたのです。それがよっぽど嬉しかったのか、利一は初めて三越にグリコが並んだ日(1922 年2月11 日)を創立記念日と定め、今でも創立記念式典を行っています。

風味袋→有料試食

「三越さんにも扱ってもらってます」という売込みで取扱店は拡大していきましたが、店に置いているだけではなかなか商品は売れません。そこで利一は小さな袋にグリコを2粒入れ「ご風味(味見)願います」と書いて配布しました。現在の試食サンプルです。その後は2粒1銭、4粒2銭の有料試食の商品も試しています。

自動販売機(公徳販売器)

店だけでなく、「人の多く集まるところで販売できないか?」と考えた利一は、夏には多くの人で賑わう浜寺海水浴場での販売を試みます。といっても当時海水浴場には売店などありませんでした。そこで利一は商品を入れた無人の販売器を設置し、代金の支払いはお客さんの公徳心に任せる販売方法を試しました。これはその後、昭和6年に東京に進出する際に100 台設置した映画付き自動販売機へとつながっていきます。

絵カードの封入

創業時のグリコには、販促物として「絵カード」を封入していました。これがその後の「グリコのおもちゃ(おまけ)」につながっていきます。

利一は他にも、今で言う割引クーポンにあたる「割引券付き引札」や「自動車宣伝」など当時前例のない様々な販促や販売方法を実施していました。

道頓堀グリコサイン

大阪のシンボルとしてテレビや雑誌、ネットなどに登場する道頓堀のグリコサインですが、これは今から80 年以上前の1935 年から同じ場所にあります。

この看板の設置場所についても利一にはこだわりがありました。

〈江崎利一が戎橋にネオン塔を設置した理由〉

イルミネーションの効果は簡単に要点を挙ぐれば

イ.通行人が多いから効果があると云ふ訳には行かぬ
ロ.気が急いで通るより、見物する様な気分でゆっくり歩いて通る所の方が効果が高い。
ハ.光を見せるものは夜の方がよいから≪夜間通行者の多い場所が効果的≫
ニ.通行者は全国的な人であれば尚、宜しい。

日本で一番通行者の多いのは、その当時の駅では、東京の新宿駅、次に東京駅、大阪駅と云ふ順序である。繁華街では東京の銀座、大阪の戎橋筋であるが、駅に比較すれば数倍多い。戎橋筋の他は皆、通路が幾ヶ所もあるから、例へば二十万人通っても四ヶ所の通路があれば一ヶ所では五万人になる。然るにただ戎橋は蛇の喉口の様に一ヶ所である。而も午後から夜にかけてが多い。且つ其の通行人は見物気分でゆっくりしている。

これまでの利一の様々な創意工夫の精神は、「おいしさと健康」の企業理念と「創る、楽しむ、わくわくさせる」のグリコスピリットとして、現在も引き継がれています。

一方、近年の新たな取組みとしては、オフィス(働く環境)を対象にグリコならではのユニークな展開を行っている「置き菓子」サービスのオフィスグリコがあります。

2016(平成28)年6 月には、オフィスグリコ事業及び直営店舗事業を行う「グリコチャネルクリエイト株式会社」を設立し、よりいっそうのサービス向上を目指しています。

オフィスグリコのサービスとは?

オフィスグリコとは、「働く人の一番近くに寄り添い菓子やアイス、飲料等を通じた、リフレッシュメント提供サービス」として1999 年にスタートしました。メインとなる菓子類の入ったB5サイズのコンパクトな3 段ボックスに菓子が24 個配置され、商品は1 個100 円(税込み)でボックス最上段にある貯金箱に代金を投入して利用します。就業者は小腹が減った時、リフレッシュしたい時に手軽に利用できるのです。設置における事業所の費用負担は一切なく、場所を取らない手軽な福利厚生として支持されています。

その他、事業所のニーズに応えながら、アイスクリームや飲料・カップラーメンなどの品揃えを順次行ってきました。

ボックスのメンテナンスには、グリコのサービススタッフが週に1 回程度訪問し、商品の入替えと代金の回収を行っています。

現在のサービスエリアは、首都圏・中京・近畿・九州の各主要都市部で展開しており、合計130,000 台、110,000 の事業所(2016 年3 月末時点)でご利用いただいています。

このサービスの根幹となるシステムをはじめとした管理体系はビジネスモデル特許を取得しており、他者がマネできない仕組みともなっています。

またオフィスグリコに類似したサービスはこれまで十数社に及びますが、いずれも途中で事業を縮小もしくは止めていて、見た目の簡易さとは裏腹に利益化の難しさがあり、現在までシェアNO. 1を維持しています。

その理由のひとつは品揃えであり、小さな商圏の組み合わせと約600 名のサービススタッフによる細やかなフォロー体制にあります。

さらに職場のリフレッシュメントツール・コミュニケーションツールとして利用されてきていることに加え、2011 年の東日本大震災以降は、費用のかからない循環型備蓄(企業にコスト負担なく、かつ日付管理がされている)として役割が付加されました。すなわち、いざという時には、災害備蓄になりかわるのです。

2015 年に入っては、職場のストレスチェック義務化がはじまり、働きやすい職場環境づくり取組みの一環としての需要も高まってきています。

プロジェクトの開始

話は過去にさかのぼり1997 年、「消費者接点の多様化」をテーマに社内プロジェクトを開始。

これまでのグリコの販売ルートは、スーパー・コンビニエンスストア・ドラッグストア・駅売店など「見える売場」を中心に流通・販売を行ってきました。

一方、少子高齢化や小売業の業態多様化が進む中、当社がメインとする売場は縮小・分散化し、また競争が激化することで新商品の発売から定番カットまでのライフサイクルも短縮傾向にあったのです。もちろんこの主戦場にしっかり向き合うことがメインであり、ブランド強化や消費者ニーズに応えたNO. 1商品を開発していくなど、市場構造に対応していくことが不可欠であったのです。

一方、将来を考えるにあたっては、いかに消費者の方々と当社製品とのかかわりを多くすることができるか?この実現に向かって進むこととなりました。

プロジェクト開始においては、「商品をどう売る」「どんな商品を作る」といった「モノをどのように売るのか?」の発想を一旦やめて、消費者の方々は日々において ①どういったものを ②どういう場所で ③どんなタイミングで ④どんな目的で ⑤食べたり、楽しんでいるのか? を数百名の方々に調査を実施しました。

オフィスに需要あり!

さまざまなデータを分析する中、菓子を中心とした消費シーンに着目すると家庭の次にオフィスでの消費が多いことに着目しました。しかし、消費の実態とは別に職場では利用しにくいという側面から潜在化した相当量のニーズがあることがわかったのです。職場は働く所であり、菓子類を食べるのは非常識だとの長年の常識がまだまだ根強く存在していました。当時はタバコOK、コーヒーOK、しかし菓子は??? それだけ、「菓子を食べる=さぼっている」というのが職場での暗黙の認識にあったのです。

一方、働く環境が業務効率化や高度化、長時間労働でストレスが多くなっていく中、なんとかしたいというニーズは高まってきていることがわかりました。

また調査を通じては、仕事の合間での菓子類の利用がお茶やコーヒーを飲む以上に大きな気分転換になることも多く、これら意見をたくさん把握する中、オフィスにおける菓子類の需要をリフレッシュメントという切り口で創造していこうと決心しました。

しかし、ここからが大変な日々の始まりでもあったのです。

オフィスグリコのサービス体系を考える

実際の販売手法・販売体制・管理システム・開拓・売上見込み・長期事業計画・労務管理等々を計画するものの、それぞれが本当に実現できるか?

誰もやったことがなく、そもそも職場での食シーンが常識にない中でのスタートは不安が一杯です。

当初は、現在の配置ボックスタイプではなくまさに「駅弁スタイル」を思考し、オフィスで需要がありそうな菓子類を肩掛けの箱に詰め、訪問販売形式で売り歩くことを考えました。そして大阪駅のメインビル群の上層階の企業にまずは飛び込んだのですが、大半の訪問先が「来ていいよ」とのこと。

「やった!」と思いたい所でしたが、各社の窓口の方がそれぞれ口にしたのは、「昼休みや終業後」であり、いわゆる仕事中に訪問するのは駄目ですとの回答でした。私は当然ながら愕然としました。早々には、この販売方式をあきらめどうすればいいのか悩み続けました・・・

さらに、仮に売れていたとしてもそもそもが訪問販売という手法でもあるため、企業の訪問許可以前にビル側からシャットアウトされるのは容易に理解できます。ちなみにヤクルトが問題なかったのは「昔から」という理屈ではないもので、もしグリコが同じようにやりはじめれば、すべて禁止とする旨の回答もたくさんでてきました。

そこで悩みに悩んだ末の回答が、「置き菓子」(グリコの登録商標です)の発想です。職場に配置されていれば、就業者は食べたい時にいつでも利用できます。小さなボックスでもあるため商品の配置数は限られますが、売れ行きを掴み品揃えと合わせてタイミングよく入れ替えればメンテナンスできます。

訪問も商品の入れ替えのための「納品扱い」となるため、宅配便と同様でシャットアウトされる心配もなく正々堂々とビルに入れるのです。

次の悩みは、代金をどう回収するか?会社に請求するような方法は事前の調査でも不可能と分かっています。最終手段は貯金箱方式だ。頭に浮かんだのは畑の近くで路上販売している「野菜売り」でその回収率がどうなのか早速調べてみました。

調査結果としては、回収率が90%程度と私には驚きの高さであったのです。

野菜が並べられ、横に貯金箱が置かれているあの風情になぜお金が入るのか? 私なりには、農家の方が雨の日も風の日も精魂込めて育てた野菜を、代金を支払わずに持って帰るというのは少なくとも日本人の常識や概念にはありえない。管理されていなくともお金を入れるという美徳感がそうさせていると感じました。今になってオフィスグリコは、見た目から配置薬を参考にしたのではないかとよく聞かれますが、まさに路上の野菜売りを参考にしていたのです。

回収率の実態を確認する中、オフィスグリコの設置先は職場であり不特定多数の人が利用する路上販売より少なくともお金を入れていただけるハズ!と思ったのです。

次にどんな貯金箱とするか? 販促会社、インターネットなどいろいろと調べ、サンプルも集めましたがしっくりこない。オフィスグリコのリフレッシュボックスにお金を入れていただくためには、代金を前から投入していただけるような貯金箱が欲しい。しかしさんざん探したのですがいいものは見つからなかった・・・せいぜい賽銭箱のような貯金箱しかなかったのです。

最悪の場合を想定しては、私の頭の中に過去の記憶として自身が小学校2年生の頃、母親が銀行の口座開設をしにいった時に窓口でもらった粗品の貯金箱を思い出していました。当然ながら今は世の中に流通していません。頼りはこの貯金箱の金型なりがどこかに存在していないか、もしあればそれを復活させて貯金箱として活用したいと思ったのです。再度販促会社数社にも協力してもらい自身も探し回ったら、3か月後に東大阪のプラスチック加工工場に当時の金型らしきものがあるとのこと!!私は急いで飛んでいき、工場の片隅にある金型を見た時はなんとも言えない気持ちで、約25 年ぶりぐらいにカエルの貯金箱が復活することとなったのです。

さらに職場に商品を届けるための手押しのデリバリー台車は納品対応をする女性スタッフにも扱いやすく、雨でも中が濡れない、商品は取り出しやすい、路上の段差もスイスイ押せる、ほとんどのエレベーターに乗れるなど、自身でサイズや構造を考えて設計し、制作できる会社も探しました。

その他、商品を入れ替える配置計画や代金回収管理、訪問計画などを一つパッケージ化したシステムとして一から考え作り上げました。しかし動き出した管理システムはバグが約800 回を超え、各現場からは日々クレームの嵐。

帰れない日々も続きました。世の中にないということが、これほど大変なものなのかと何度もへこみ何度も後悔もしました。後にこの管理システムは社内初のビジネスモデル特許を取得するのですが、それもこれも苦労の連続でした。

でも、テスト展開ながらも開拓設置したリフレッシュボックスの売上げは、利用個数・回収率とも想定通りで安定していました。これが何よりも心のよりどころとなっていたのです。

社内での事業としての承認は、時間を要しましたが事前に設定した売上・開拓・管理手法などのテスト判定項目をクリアしていたのですが、なかなかたどり着けなかったのです。どうやったら社内の理解を得ることができるのかを考える中、社内の全職場に実際にリフレッシュボックスを設置したのです。

まさに「百聞は一見にしかず」であり一般の会社よりも社内には菓子類が存在していながらも各職場でよく利用され、後に承認を得ることができました。

その後は、開拓の促進と共にサービスエリアを順次拡大すべく、大阪から東京へと進んで行ったのです。またマスコミによる取り上げも多くなり、実際に設置していただいた企業様から、別の事業所・企業様の紹介なども増加しました。

我々が当初目指した「職場でのリフレッシュメントサービス」というコンセプトが自然と「置き菓子」「オフィスグリコ」というサービスとして認知され広がっていきました。

男性需要を喚起

サービスを継続する中で、当初は職場の女性を中心とした需要を見込んでいましたが、サービスを継続していく中、うれしい誤算がありました。それは想定以上に男性層の需要が大きいことでした。小腹が減ることによる動機はもちろんですが、そもそも買いにいくのが面倒であることや、上司部下のコミュニケーションツールとして機能していた点です。

それは、通常の店舗販売ではとらまえることのできなかった潜在的な新たな需要が創出できたともいえます。理屈だけでは見つけることのできないものだとあらためて感じました。

最後に

事業を立ち上げて感じたのは、

  1. 事業としての意義と社会・会社に対しての貢献とは何か
  2. テスト等どうなっていれば成功とみなすかの判断基準を共有化する
  3. 長期PLの設定をはじめ、事業構造をいかに「見える化」するか
  4. 人に対して熱く(情熱)なれ、働きかけをおしまない人材がメンバーに複数人存在する。またメンバーをすぐに変更しないことが非常に重要であるということ

現在では、年間200 万人を超える方々にご利用いただいていて、売上げも53 億円規模になりました。グリコ全体の売上からすればまだまだ小さなものであるが、職場でのさらなるリフレッシュメント創造に向け、また職場環境に必要不可欠な存在となれるよう、サービス領域の拡大と共にこれからも事業成長していきたいと考えます。

以上

大阪商業大学 総合交流センター

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