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授業の事例紹介

高校における実践報告「桜井をもっとメジャーに! ~今だからこそできること~」

Pick Up Lesson Vol.99

高校における実践報告
桜井をもっとメジャーに! ~今だからこそできること~

奈良県立奈良情報商業高等学校 奈良県立商業高等学校 商業科  足立 友美 氏

1 はじめに

⑴ 学校紹介
 県立高等学校適正化実施計画が発表され、本校は商業科のみを設置する高等学校として、アントレプレナーシップ教育を推進することとなり、本年4月、奈良県立商業高等学校が開校し、第1期生200名が入学した。県立商業高校は「会計科」「経営ビジネス科」「情報ビジネス科」「総合ビジネス科」の4つの学科がある。いずれの学科を選んでも、実社会で生かせるスキルを身に付け、社会で即戦力となれる人材の育成をめざしている。そのため、実学教育の推進、部活動の推奨、資格取得を3つの柱としている。

⑵ 模擬株式会社たまつえ
図1 株券販売の様子  2015年、県より起業家精神育成プログラムの研究指定を受け、生徒の「望ましい勤労観・職業観の育成」をめざし、校内に模擬株式会社たまつえを設立した。全校生徒や教職員が出資して(図1)、その資金を元手に販売実習を行い、決算書を作成し、利益の一部は次年度に繰り越し、残りは、配当金として出資者に還元している。実学教育の一環として『空き店舗を活用したアンテナショップ』を実施したり、地元商店街で開催される『ソラほんまちフェスタ』に参加したり、地域との連携も深めている。


2 模擬株式会社たまつえ

図2 生徒開発商品アロマプレート

 模擬株式会社たまつえの中で、生徒が開発した商品『アロマプレート』(図2)を2017年度より、県内の道の駅などで委託販売を行い、また、アロマの香りが高齢者ケアに役立つことを知り、高齢者福祉施設にクリスマスプレゼントとして贈るなど、社会貢献も行っている。徐々に、活動範囲が広がったため、2018年度から『部局たまつえ』という部活動を作り、そこでこれらの活動を続けるとともに、さらに地域活性化に取り組んでいる。
 部局たまつえは『桜井をもっとメジャーに!』を合言葉に、部活動として活動を始めて、今年で4年目となり、部員19名で活動している。



3 昨年度からのコロナ禍での取り組み

⑴ 地場産業を生かす
 これまで駅前の活性化に焦点を当てていたが、地場産業に着目し、地場産業の1つである木材を使って、地域の活性化を考えた。小学生や幼稚園児を対象に「マイ箸」づくりのワークショップを行いながら、地場産業を知ってもらい、さらには、食育・木育の推進にもつなげたいと考えた。早速、学校近くの木材店を訪れ、事情を説明したところ、快く端材を提供していただくことができた。作り方を調べ、頂いた桜井市の木でもある「杉」を加工し、試作品が完成した。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大し、イベントは自粛。箸づくりプランは来年度以降に持ち越すことになった。
 そこで、生徒は、折角なので木材を生かして、「今だからこそできること」はないかと考えた。コロナ禍の生活で「人が触るところが気になる」という普段の何気ない会話を機に『非接触グッズ』を発案した。

図3
図4

⑵ フードドライブの実施
 7月に、学校近くにある「こどもの居場所とまり木」さんから相談を受けた。
図5 「こども食堂を運営しているが、あまり周知されていない。みんなに知ってもらうために、ぜひ、部局たまつえのみなさんに、どうにか力を貸してほしい」という依頼だった。とまり木さんのチラシを作成すると同時に、コロナ禍で子供たちも家に閉じこもりがちなため、夏の思い出になればと、感染予防を十分にしたうえで、夏祭りイベントを企画し、運営した。そこで、こども食堂の実態や、食品ロスの話を伺い、フードドライブを実施することにした(図5)。とまり木さんを通じて出会った、桜井市議会議員の方と面談し、フードドライブを開催するために、集めた食品をコーディネートしてもらうため桜井市社会福祉協議会とつないでいただき、月1回開催しているマルシェとフードドライブを同時開催することにした。
 フードドライブを実施することをポスターなどで告知し、食品提供を呼びかけ、集まった食品を、桜井市社会福祉協議会へとつなぎ、そこから、支援を必要とされる方たちにコーディネートしてもらった(図6)。
 この取り組みを通して、様々な方とつながることができ、多くの方に社会的課題に対して気づきを与える啓発になった。



⑶ 桜プロジェクト(生理の貧困対策に取り組む)
 昨年度、「生理の貧困」に関するニュースを目にする機会が増え、自分たちにできることを考えた。プロジェクトの1つめとして、校内の女子トイレに生理用品を設置し(図7)、自由に使用できるようにした。プロジェクトの2つめとして、桜井市役所と連携して、市内の生理用品が手に入りにくい方たちのお手伝いができればと考え、昨年度様々なコンテストで頂いた賞金などを原資に、5月13日、10万円分の生理用品を松井市長にお渡しした(図8)。プロジェクトの3つめとして、桜井市内の中学校や、市内の公共施設に生理用品を置いていただけるように、6月30日、桜井市教育長を通じて2万3千円分の生理用品をお渡しした。多くの自治体で、生理用品の無償提供が行われているが、多くが、数量限定でなくなり次第終了となっている。生徒たちは、この取り組みが、単発で終わるのではなく、トイレットペーパーと同じように設置される社会をめざし、持続可能な取り組みとなるよう活動している。

図7
図8

4 おわりに

 生徒たちの頑張りのおかげで、私たち教員にもたくさんの出会いを与えてくれたことに心から感謝すると同時に、これまで実践にご協力いただいた皆様に深く感謝いたします。今後、生徒たちが郷土愛を持った地域の担い手として活躍することで、地域力の向上につながることを期待している。
 最後に、新型コロナウイルス感染症の1日も早い終息を願うとともに、関係される方々の健康をお祈りし、withコロナ、afterコロナも見据え、私たちにできることをこれからも考え、活動していきたい。

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