- 「第11回大商大ビジネス・アイディアコンテスト」
課題部門入賞 - その後、自ら商品開発に携わることとなったのが、経済学部経済学科4年生の
田代翔太さんです。今回は、この度商品化が実現した「マグネット反射ワッペン」の商品化に至るまでの過程について、課題提供企業である旭電機化成株式会社の専務取締役 原守男氏とともにその苦労や感想などを語っていただきました。
安全ピンで服につけるとなると、高齢者には危険だと言う認識もあったので、専務の意見を聞いて形状を再考しました。ただ、この頃考えていたのは、表裏が最初から分離したバラバラのもの。デザインも表裏で違ったものを考えていました。
原専務片方だけにマグネットがついていると、何個もつけた場合には、違う場所でくっつき合うので服がぐしゃぐしゃによれてしまうんです。そこで、クリップ型に折り曲げて両側から服をしっかり挟み込む形状を考えました。この形だと、折り曲げて襟に使える。あるいは、服の真ん中につけたい場合は切り離して服の表裏からくっつけることが可能です。つまり、切り離せるというオプションをつくったわけです。また、柄も「肉球」と「四葉」、「招き猫」に決まりました。それから、絵柄を黒いラインで描いた方が、くっきり柄の形がわかって可愛いと。色も黄色で決定しました。こうした商品の最終決定までに、私たちは通常のプロセスとしてさまざまなアンケート調査を行うのですが、今回は、それを田代君にすべてお任せしました。
高齢者福祉施設などで、商品の色、形状、柄、値段、ネーミングまでを含めて、それぞれの項目ごとに細かくヒアリングしました。各施設には何度か通って聞き取り調査を行いつつ、アンケート調査(1回目45名、2回目105名)でご意見を取りまとめました。1回目のときは、マグネットが片側だけだとすぐに落ちてしまうんじゃないかというご意見が圧倒的だったので、2つをくっつけてクリップ型にしました。絵柄もいろいろとご提示しましたが3案が残り、商品のネーミングも20種類ぐらい自分で考えました。最終的に、分かりやすいというご意見が多かったので、「マグネット反射ワッペン」という名称に決定しました。
ネーミングによっても商品の売れ行きが左右されますからね。そのほか、商品自体だけでなく、陳列棚に商品をおいていただきやすい大きさのパッケージを考える、あるいは、協力していただく会社名などの名前をクレジットとして入れるかどうか。そういった、ひとつ一つの関門を地道にクリアして初めて、商品化に至ります。今回は、弊社で行っている商品開発の手法を、実際に田代君にやってもらったわけです。アンケート結果も実によくまとまっていて、うちの会社のメンバーよりずっときっちりしてましたね(笑)。この難しい作業を、本当に根気よくやり遂げてくれました。
実際に自分のアイディアの商品化に携わって感じたのは、商品化にまでこぎ着けるのは、本当に難しいということです。自分一人だけでは絶対完成していません。専務をはじめ、意見をお聞きしたあらゆる方々の協力があってできたものだと思います。
今は、感謝の気持ちで一杯です。
田代君も、本当に最後まで頑張ったと思いますよ。彼にとっては、道のないところをひたすら走り続けている感覚だったと思います。でも、商品化をする過程では、道無き道を走っているうちに何となく道筋ができてくるもの。そんな、商品開発の面白さも感じてもらえたのではないでしょうか。私たちも、田代君の熱意に触発されて、“休んでたらあかん。よし、頑張ろう!”という気持ちになれましたしね。こちらが引っ張っているつもりで、いつのまにか、田代君に引っ張られていたという感じですわ(笑)。
実は、私の幼い頃からの夢は消防士。今回の経験は、将来の目標とは直接関係ないかもしれません。でも、一番感じたことは、人と人とがつながることの大切さです。いろいろな方々の意見に耳を傾けて、その交流のなかで自分も成長していく。そんな気持ちになれたおかげで、今までとは180度生活が変わりました。今までの自分では考えもしなかった、学外での地域交流にも積極的に参加するようになりました。将来、あこがれの職業に就くことができたら、この気持ちを大切にして頑張りたいと思います。
原専務去年の7月から商品化の行程が始まって1年になりますが、最初は、こんなに自分の意見を言える子じゃなかったんですよ(笑)。そばで見ていて、彼が目に見えて変わった、成長したと感じます。社会に出れば、自ら考えて行動しなくては誰も相手にしてくれません。考え方、生き方を変えないと新しい商品はつくれない。そんな風に、田代君が身をもって感じてくれたのだと思います。今回の田代君のように、若い人の成長の手助けになるような機会をいただくのは私たちとしてもうれしい限り。また一緒に、大商大の学生さんと商品開発を楽しみたいですね。
- 旭電機化成株式会社 専務取締役原 守男
- 1957年 大阪市生まれ
1993年頃より20年間で生活に密着した自社商品を800アイテムほど開発販売 下請け加工業との二刀流(半分脱下請け)を目指し企業経営をしている。
- 大阪商業大学 経済学部4年生田代 翔太
- 大阪府立高石高等学校 出身
第11回大商大ビジネス・アイディアコンテスト課題部門において、東大阪商工会議所会頭賞を受賞。
旭電機化成株式会社
自社のオリジナル商品は60%を占め、「しっぷ貼りひとりでペッタンコ」「電池アダプター」など数々の商品を生産。「アイディアを暮らしに!」をキャッチフレーズに開発された商品は約600点。
称号 | 旭電機化成株式会社 | 資本金 | 75,000,000円 |
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創業 | 昭和8年2月1日 | 年商 | 20億円(2007年度) |
設立 | 昭和25年11月25日 | 従業員数 | 150名 |
商品紹介
『マグネット反射ワッペン』は、車のライトなどの光が当たることで、自分の存在を知らせることができる高輝度反射ワッペンです。
歩行者の服やカバン、帽子などに磁石で簡単に、自由に、自分の思いどおりに取り付けることができる可愛い交通安全対策商品です。デザインは「招き猫」「クローバー」「肉球」の3タイプで展開中です。
今回のワッペンについては、夜道で高齢者の事故が多発しているという話をお聞きし、「誰でも簡単に取り付けできる反射グッズがあればいいな」と考えたのがもともとの発想です。最初の段階から、いろいろな柄で展開したいというアイディアはありました。好きなデザインで身を守る。そんなことをコンセプトに考えました。
原専務今回のコンテストでは、学生から600件以上の応募があったんです。でも、そのなかで商品化できそうな魅力的な案は、田代君のアイディアだけでした。“これや!”とピンときましたね。最初は、このワッペンの柄を直接服につけた形のウィンドブレーカーのような商品を考えました。しかし、それではコスト的に高いから無理だと。光る柄の部分だけを取り出したら商品化しやすいと考え、もう一度形状を考えてくれへんかと、田代君に投げかけてみたのです。最近は、小型で強力なマグネットがあるので、それを使って考えてほしいとお願いしました。