授業の事例紹介
起業教育ワークショップ
「大垣商業高校の企業分析事例研究の取り組みと実践報告
《高校生における『ユーレット』活用術》」
Pick Up Lesson Vol.96
起業教育ワークショップ
大垣商業高校の企業分析事例研究の取り組みと実践報告 《高校生における『ユーレット』活用術》
岐阜県立大垣商業高等学校(現在は岐阜県立大垣養老高等学校勤務) 教諭 土本 繁
1 はじめに
本校は、今年創立117年を迎える歴史と伝統を継承した県下最古の商業高校であり、商業科と情報科が併設されています。本校の伝統訓「士魂商才」は「人のため社会のために勇気と使命感を持って行動する精神」と「広く産業社会に貢献しうる知性と能力」のことを指しています。「品位」と「活力」ある校風の形成に努めるとともに人間としての在り方生き方の指導を推進しながら、「自分自身を厳しく錬磨し知性と能力を身に付けた有為な産業人」つまり、豊かな社会の実現のために自己の才能を生かすことができる人材の育成に努めています。
教育目標
⑴ 知・徳・体の調和のとれた豊かな心と健やかな体の育成
⑵ 地域、家庭、学校の連携協力による明るく、活力ある、地域社会人の育成
教育の重点
⑴ 自ら学ぶ意欲・態度の育成
⑵ 命を大切にする心や倫理観・規範意識の育成
⑶ 生徒一人一人の社会的・職業的自立に向けたキャリア教育の充実
⑷ 豊かな心の育成
⑸ 健康・安全教育の推進
⑹ 「挑戦する力」、「活かす力」、「生きる力」の育成
〔学科の目標〕
会計分野の専門知識を中心に、情報処理など他の分野の基礎的・基本的な知識や技術を学ぶとともに、豊かで誠実な心を身に付け、経済社会のいろいろな場面で活躍できる人材を育成する。
2年生より専門性を高めるための類型に分かれ、将来の企業会計人を目指します。
《ファイナンス類型》
高度な会計の知識を学ぶことにより、税理士試験や公認会計士試験などの職業会計人や、企業のリーダーとして経済社会の発展を牽引できる能力を身に付けます。
《マネジメント類型》
学習と部活動の両立を図りながら、簿記・会計を中心に幅広い分野を学び、即戦力でビジネスの諸活動の現場で活躍できる専門性を深めます。
これらの教育目標に向け、会計科では以下のような取り組みをしてきました。実践報告の資料をもとに紹介します。
2 企業分析事例研究の取組み
本校会計科3年生40名を対象に、今年度、公益財団法人ソフトピアジャパン、ユーレット株式会社、株式会社セイノー情報サービス、大垣商業高校の「産・官・学」が一体となって、「ITものづくり等推進支援事業補助金」を活用した「企業分析事例研究」を取り組むことで合意しスタートしました。
⑴ 事業の概要
企業分析事例研究の学習領域は、戦略論、組織論、意思決定論、企業形態論など多岐にわたっているが、高校の商業科目「課題研究」では、それらの根幹となる企業情報を分析する能力について、『ユーレット』を使って学習を進めました。『ユーレット』(http://www.ullet.com/)とは、ユーレット株式会社が開発し2006年から公開している企業価値検索サービスであり、上場企業約4,000社の企業情報を、有価証券報告書の情報をもとにまとめた無料のポータルサイトのことです。また、本科目の学習内容は、「事例研究」であるため、最新のニュースで取り上げられた企業を中心に、毎回特定の企業を研究対象としながら世の中の動向をつかむことを心がけるようにしました。「企業Aがなぜその業績に至ったのか、企業Bの今後の見通しは、といった疑問点について、『ユーレット』のどの情報を調べ、活用すればよいのか」その方法や情報の紐づけ方を学ばせることで課題解決の糸口になるよう取り組ませました。今回の指導方法のポイントを教育コンテンツとして作成し、自主学習及び授業の課題管理を行うためのe-learningシステムを構築することも事業内容に位置づけました。
⑵ 授業の進め方
授業の進め方は、事業概要にもとづき『ユーレット』を使いながら「授業項目」の各テーマについての理解を深めるものである。各セッションのまとめとして、「課題提出の指示」に記したようなレポート(小論文方式)の提出を生徒個々に課した。本授業を通して養われる「情報を紐づける力」は、目前の就職活動における企業研究に役立つことはもとより、就職後における経営戦略立案にも活かされる思考プロセスを学ぶことで大いに役立つことが期待できます。
⑶ 到達目標
・情報の意味を理解できる。
・企業分析のための思考プロセスのポイントがわかる。
・ニュースなどの事例を企業情報と紐づけて考察する力を有している。
・企業情報を自ら分析して、それを就職活動の指針にできる。
⑷ 参加企業および学校(順不同)
ユーレット株式会社、株式会社セイノー情報サービス、
公益財団法人ソフトピアジャパン、大垣商業高校(会計科)
3 実践報告
《発表スライド》
《企業分析事例研究の概要》
《授業計画》
《企業分析レポートの構成内容》
《レポートのまとめ方》
《企業検索サービス「ユーレット」活用方法》
《レポートの提出方法》
《レポートの提出内容 学習を終えて》(抜粋)
《企業分析事例研究の成果発表および活動記録》
4 おわりに
今回の企業分析事業研究の取組みでは、「産・官・学」の連携を生かし、多くの方々にご指導いただけたことから普段できない学習内容に取り組めました。当初、事業企画の打ちあわせでは、「ニュースなどの事例を企業情報と紐づけて考察する」ことは、高校生に難しいと思われましたが、授業を重ねる中で個々の考察する力が、グループの仲間と共有することで互いの知識、思考を補完しあう場面が見られました。このような学習の積み重ねが、アクティブラーニングとしての効果にもつながっていると考えられます。学習を終えた生徒の感想からも十分学習成果を得られたことが実感でき、本校会計科が目標とする企業会計人の育成に向けた実践的学習として取り組めたと思います。「情報を理解するための必要な知識や時事ニュースに目を向けるなど実務として専門分野で活躍されている外部講師の招聘により指導助言をいただきました。その中でも「企業分析のための思考プロセスのポイント」を受講した生徒および指導する側にとっても企業研究するうえで大きな財産となりました。これらの実践的な学習を通して、学んだ力をどのように活かしていくかが今後の課題とも考えます。企業分析事例研究で学んだことが、「企業情報を自ら分析して、それを就職活動の指針」として企業比較や分析を行うことが訪れた際に、身に付けた力を活用して、人生の選択の一助になることを期待しています。