所長挨拶 | 大阪商業大学 共同参画研究所

所長挨拶

共同参画研究所所長 的場 啓一 の写真
共同参画研究所所長
的場 啓一

私たちが生活する日本では、「長子相続」や「男尊女卑」などのジェンダーが根強く、男性中心の社会が運営されてきました。しかし、近年では性別にかかわりなく活躍できる社会の構築が、取組むべき今世紀の最大課題であるとされ、国を挙げて「男女共同参画」に取組んでいます。

この「男女共同参画」は、男女を社会の対等な構成員としてとらえ、自らの意思により社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が個人に対して確保された状態であると考えられています。また、参画するだけでなく、参画した結果として男女が均等に経済的、政治的、社会的、文化的利益を享受し、男女が共に社会に対して責任も分かち合う状態でもあると考えられています。

「男女」の共同参画はさまざまな取組の甲斐があり、随分と進んできました。しかし、自らの意思により社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保されるのは、男女に対してのみ考えて良いのでしょうか。

日本国憲法第13条では「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と謳っています。私たちが暮らす日本では、すべての国民が個人として尊重されなければなりません。男女共同参画は、性別により個人的尊厳が冒されることを排除していこうという取組です。個人的尊厳が冒される素には「性別」だけでなく、「年齢」、「障がいの有無」、「国籍」などさまざまなものがあります。いま求められているのは、同じ公共空間を共有するすべての人間の「共同参画」です。

近年、私たちの周りでは、人間関係が希薄化し、地域社会も地域力が低下して「社会的孤立」や「生活困窮者」が社会問題となり、家庭や職場に止まらず、地域社会においても「社会的排除」は新たな社会的リスクとなりつつあります。社会的排除の対象となりかねない「社会的弱者」も包摂したすべての個人の尊厳が大切にされ、守られた地域社会づくりが求められているのです。

地域社会には、幼児、女性、高齢者、障がい者、外国人など社会的にも経済的にも弱者が存在していますが、これらの人たちは時として「社会的排除」の対象となってしまいます。さらに、この「社会的排除」は世代間連鎖を伴い、子から孫の世代へと引き継がれていく可能性を持っています。

「社会的排除」の連鎖を食い止め、社会的弱者も包摂したすべての人が個人として尊厳され、自分の意志で活動し、責任も担い、利益を享受できる社会の実現を今を生きる私たち全員で考えなければなりません。人任せにするのではなく、私たちが当事者としての意識をもって、取組んでいかなければなりません。特に、行政任せにするのではなく、地域社会で生活する者も参画して、行政やさまざまな団体等と協働して対処していく必要があります。

大学は地域の「知の拠点」といわれます。教育を施し、研究を積み重ねるだけの機関ではありません。地域社会に対して学術的、文化的貢献を果たすことが不可欠であり、教育や研究で培われた「知見」を地域に還元してこそ、「知の拠点」となり得るのです。

このような中で大阪商業大学では、地域創造の担い手である中間組織(自治会、NPO法人、企業、教育機関など)に関わる人々の「社会的包摂」に対する認識を深め、「社会的包摂」に関する研究や具体的な課題解決に向けた取組を調査、研究し、実社会で活躍できる人材を育成するため「共同参画研究所」を設立しました。

本学の建学の理念でもあります「世に役立つ人物の養成」のもと、学生はもとより学外の方々と共に研究所に関わる者が一丸となって「共同参画」推進に取組んでいく所存です。