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「これでは負ける」という気持ちを常に持って、再び全国の舞台へ -第70回全日本大学野球選手権記念大会を振り返る-
ニュース 2021/08/05
5月3日、春季リーグ第5節、京都産業大学が龍谷大学に勝ち、勝率で本学硬式野球部を上回るチームがないため、最終節を待たずして4季連続21回目のリーグ優勝が決まる。と同時に全日本大学野球選手権出場への切符を手に入れた。優勝後、富山陽一監督は「リーグ戦の優勝は予定通り。全日本選手権では日本一を目指します」と次の大舞台を見据えて意気込みを語ってくれた。全日本への出場を決めたのは全国最速。しかし、開幕まで一か月以上もあり、それまでの調整が不安視される。「他のチームより調整できる時間があるため、プラスと捉えました」と家郷廉也主務(公共4)。「実はリーグ優勝が決まった時、富山監督と握手を交わしたんです。その時により一層、日本一になりたいと思いました」。
5月9日、全日本大学野球選手権の初戦の対戦相手が中国地区大学野球連盟代表の東亜大学(山口県)に決まる。東亜大学の出場は6年ぶり11回目で、秋の明治神宮野球大会では過去に3度の優勝経験がある。「全国の優勝経験があるチームなので気が抜けない」と家郷主務。一方、主将の福元悠真(商4)は「相手がどこというのではなく全員でしっかり準備をしていけば必ず勝てる」と力強く語った。
6月7日、初戦当日、東京は快晴。コロナ禍により5,000人と入場制限が敷かれた東京ドームは、大学からの応援も少なくこれまでの選手権と若干雰囲気は異なっている。
本学は後攻。先発投手はリーグ戦にてリリーフ無失点の花村凌(公共4)。「初戦の先発と監督から告げられたのは、リーグ戦の優勝が決まった時でした。この一戦は自分一人で投げ切ってやろうと思いました」と花村投手。その言葉通り、安定したピッチングを見せる。0対0で向かえた3回裏、本学の猛攻が始まる。9番碓井雅也(商3)の左安に始まり、1番修行恵大(経営3)の右安、2番植本亮太(公共3)の中安で無死満塁とし、3番渡部聖弥(商1)が甘い球をしっかり狙い右中間への適時打で1点先制、1死満塁の場面で5番家田陸翔(公共3)が四球の押し出しで2点目、2死満塁の場面で7番大谷駿斗(経済4)も四球の押し出しで3点目を入れた。そして、続く8番薮井駿之裕(商1)が右前への2点右適時打を放つ。「2回の初打席でチャンスが回ってきましたが、凡退してしまったので次の打席でしっかり準備をして結果を残せて良かったです。監督からは「よく打った。次も頼むぞ」とお言葉を頂きました」薮井はその後も5回1死二、三塁で左翼へ犠飛を打ち上げ、6点目を奪う。この試合、2安打3打点の活躍を見せた。「全国の舞台で結果を出せて本当に良かった。率直にすごく嬉しかったです。実は1週間前に脱臼したんですよね」と笑顔で語った。
6回表より投手は花村に代わり前田竣也(商3)→野中太陽(商2)→池田尚樹(公共4)→上田大河(公共2)と4投手を起用。5番手として登板した上田は自己最速の151キロをマークした。「東京ドームのマウンドはとても硬く投げやすかったです。151を出せたのは自分の投球が出来ての結果。監督からは普段から「頼むぞ」と言っていただいているので、それに応えたいと思いました」。
そして、9回表2死の場面で6番手に次戦福井工大戦で先発となる伊原陵人(商3)が登板する。「マウンドの確認で投げさせていただきました。緊張はしませんでした」しかし、伊原は全国大会での舞台は初めてではない。2年前の1年生の時、明治神宮野球大会にて東海大学札幌キャンパス戦で8回裏から登板し1奪三振を含む三者凡退に打ち取る見事な投球を見せた。そして今回の登板でも三球三振で最後のバッターをきっちり抑える。東亜大学戦は6対3で快勝した。しかし、チームは歓喜することなく次戦を見据えていた。「チームは一回戦を突破し、すぐに次戦に向けて考えていました。チームの雰囲気はとても良かったですね」と家郷主務。
初戦の翌日、チームは郊外の野球場で練習をしていた。茹るような暑さの中、投手はランニング、野手はシートノック、ティーバッティング、フリーバッティングに打ち込んでいた。昨日の勝利は無かったかのように、浮ついた雰囲気は全くなく、球場は緊張感が漂っていた。福元主将もフリーバッティングで快音を響かせる。「各選手が試合での役割や、対戦相手の対策をしていました」と福元。翌日の対戦相手となったのは、北陸大学野球連盟代表の福井工業大学(福井県)。今回出場している大学の中で最多の43回目の出場となる超ベテラン校である。初戦は北海学園大学を11-3(7回コールド)で下している。「福井工大の印象は打線が良く繋がるチーム。戦術は、外野は後ろから、長打とならないように。油断は絶対禁物だと思いました」と家郷主務。
6月9日、この日も東京は快晴。福井工大からは多くの応援が東京ドームに駆け付けていた。この試合の先発を任された伊原投手は「この試合は自分の投球でチームを勝利に導けるように頑張ろうと思いました。振りがよくシャープな打撃をするチームなので低めに集め抑えようと思いました」。
その伊原が1回表に掴まる。2番木村外野手の中安と4番尾堂内野手の左中間への適時二塁打で1点先制される。「ストレートを打たれました。0点に抑えることが自分の役目だと思っていたので、先に点を取られたことが反省点です」その後2回には、2死二塁の場面で牽制悪送球とボークで追加点を取られる。「ショートへの送球が逸れたのは自分のミス。ボークの自覚はありませんでした。しかし、ボーンヘッドをしてしまったのがチームの負けにつながったと思います。自分の不甲斐無さを感じました」。
しかし、0対2で向かえた5回裏、6番指名打者の加川大樹(公共4)が5球目インコース高めの球をスタンドに運ぶ。「球種はスライダーでした。正直入るとは思ってなかったので素直に嬉しかったです。
ここまで良くない流れだったので自分の本塁打が出てベンチからはここからだという前向きな雰囲気や声が出ていました」その言葉が表すように、祝原投手の球にミートし始める。その矢先、福井工大の下野監督が動いた。投手交代。エースの立石投手がマウンドに立つ。「緩急、コントロールが良く、良いピッチャーでした」と福元。立石投手の直球とキレ味鋭い変化球がさえわたり、バットは次々と空を切る。そして、6回表、福井工大の2番木村外野手が伊原の低めのボールをすくい上げ左翼への本塁打、続く5番長峯外野手に中安を放たれ、投手は伊原から上田に交代。「監督の期待に応えるため、ここでも自分の役目をしっかり果たそうと思いました」と上田。しかし9回表に6番南内野手に左安を放たれ、上田から花村に継投。9番御簗捕手の中前適時打などで1点追加される。試合はそのまま終了し、結果は1対4。打線は3安打に抑えられ、2大会連続の8強進出を逃した。「メンバー全員が悔しがっていました」と家郷主務。「力が及ばなかった」と富山監督。福元主将は「チームとしてはまだまだやらないといけない事が多く見つかり、本当に悔しい大会となりました。個人としては情けない、不甲斐無い結果でした」と今大会を振り返った。
秋のリーグ戦は9月4日開幕予定。全国でのベスト8の壁は高いが、大商大ナインは既に前を向いている。「全日本選手権の負けを忘れることなく、個人が足りないところを見つけ「これでは負ける」という気持ちを常に持って、もう一度全日本に出るという目標、そして日本一に向けて取り組んでいきたいと思います」力強く福元は語った。
明治神宮野球大会は今年最後の現チームの集大成。4年生にとっては最後の学生野球となる大会。日本一の称号を手にする瞬間を楽しみに待ちたい。