研究プロジェクト
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令和3・4年度プロジェクト
地域公共交通ネットワークの再構築に向けた社会構造の分析
研究目的
新型コロナウイルス感染症の問題(以下、コロナ禍と記す)は、以前から良好とはいえなかった、地方都市や中山間地域の公共交通(電車・バス・タクシー等)事業者の経営を悪化させている。政府による地域公共交通支援の在り方は以前から議論されており、2020年には自治体が公共交通計画を策定することが義務付けられるようになっている。コロナ禍以降、こうした枠組みを適用した公共交通の支援・改革は加速化していくと考えられるが、同時に、「単なる既存の民間事業者によるサービスの代替、既存事業者の損失補填」ではなく、「地域社会にとって望ましい公共交通ネットワークの構築」より一層求められるようになる。現状の地域の公共交通政策、およびそれを対象とした研究は前者、すなわち「既存の公共交通利用者が不自由しないサービス提供」に主眼が置かれている。他方、後者を実現する際に必要となる、「自動車を主に使う市民が公共交通に何を望むのか」、「公共交通改善に向けてどのように合意形成をすれば良いのか」といった点については実証的な研究が少なく、実地での検討も十分に行われていない。本研究では、これらを京都府北部、兵庫県丹波地域でのアンケート・ヒアリング調査を用いて解明することを目的とする。
現代日本の経済・社会に対するグローバリゼーションの影響と文化変容
研究目的
近年、グローバル化が急速に進展している。この間の状況を見ると、現地日系企業は日本固有の技術やJIT・5Sなど日本的経営を根付かせる努力を行いながら、進出先企業の発展に努めてきた。一方で、現地従業員からすると、歴史や制度、文化が異なることから、日本的経営がすんなり受け入れられなかった側面もある。こうしたことから、これからの事業の多角的展開に当たっては進出先での違いがあることを認識して取り組むことが求められる。また、進出の歴史が長い日本企業においては、進出先からの影響を受け、両者を融合した取り組みをしていると考えられる。経済が急速にグローバル化している中での、日本企業・日本文化の現地への「適用」と「適合」という課題の解明にチャレンジしていきたい。現在はコロナ禍で、かつてのような自由な外国との往来ができなくなっているが、一度立ち止まってこれまでのグローバル化を見つめなおし、今までのあまり顧みられなかった文化的側面にも目を向けることや、具体的なかたちで融合がどのように進んでいるのかを、まずは日本の国内企業を対象に調査する。あわせて、現在、取組が進んでいるCSRやSDGsについても、ヒアリング調査を継続して行うとともに、この分野で先行的研究を行っている研究者と研究会を開き、意見交換を行う。
令和2・3年度プロジェクト
*新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため中止
世界都市の若いホワイトカラー層の居住貧困とその住宅政策-北京とソウルの比較研究-
研究目的
グローバリゼーションの進展に伴って、世界経済は少数の世界都市と呼ばれる大都市に牽引・支配される傾向が強くなっている。森ビル財団の研究によると、北東アジアにおいて、東京が総合3位の地位をキープしている中で、ソウル、北京が健闘し、経済分野では、2019年に北京が東京よりランキング上位となった。これらの都市は多国籍企業・高度人材・巨大資本が集積している一方、都市内部では激しい格差を生み出している。少数の成功者に対して、成功を夢に見てチャンスを求めて都市に新規流入してくる若いホワイトカラー層が都市の競争力を支えながらも居住困窮状態に追いやられている。北京とソウルは図らずも華やかな経済パフォーマンスと裏腹に、一様に深刻な若いホワイトカラー層の居住問題を抱えている。本研究は、世界都市と目され、ともに世界経済を牽引する地位にある両都市においてその経済発展を支えている若いホワイトカラー層の居住問題に焦点を当てて、彼らの置かれている居住実態を明らかにし、居住困窮に陥る制度的・政策的問題を探索してゆく。
グローバル化が深化した東アジア地域企業の経済・経営的な側面と文化の融合に関する実態調査研究
研究目的
近年のグローバル化の深化により、ASEAN諸国をはじめ、東アジア地域への海外直接投資が大幅に増加している。グローバル化の初期段階では、現地日系企業に日本の技術やJITをはじめ、品質向上のための取組が行われたが、現在ではローカル企業にも広がりを見せている。また、日本で始まった6次産業化に取り組む動きも見られるなど、グローバル化はさらなる広がりと深化を見せている。このほか、これまで研究してきたCSRも、SDGs時代の中で、日本的CSRが喧伝されるなど、新たな動きを見せている。こうしたグローバル化が深化していく過程では、自国文化を尊重しながらも、日本文化との融合も進んできていると考えられ、文化面の融合が企業経営にもプラスに影響していると考えられる。本研究では、上記のような問題意識の下、これまでの東南アジア研究をさらに発展させる。具体的には、東アジア諸国における日系企業の行動や、ローカル企業における日本的経営の浸透度、6次産業化の取組みやCSRの各国の実態について、ヒアリング調査を中心に研究を進める。次に、日本的な取組み等、日本的経営を取り入れたローカル企業では、文化面でも融合が進んでいると考えられるが、企業内で日本文化と現地文化がどのように融合し、企業の発展につなげているか、その実態や課題について明らかとする。
大学研究成果および地域文化資源の活用を通じた地域活性化の比較研究
研究目的
世界的に著名とはいえないが、研究上興味深い事例を現地調査し、地域固有の活性化政策や影響度を比較研究し、類似要因をもつ他地域との違いをもたらした条件を明らかにする。本研究での研究課題は、大学研究成果と地域文化資源およびその融合である。いずれも他地域の網的取組ではなく、地域の強みを最大限活かし、最善で先端的な水準を実現している点に共通性があると思われる。アメリカでは、先端研究成果の事業化と産業的拠点形成に関してニューヨーク州アルバニーとカリフォルニア州サンタバーバラ地区(半導体関連)、アメリカ中部・南部の大学研究成果と地域貢献の関係と実現過程を現地調査する。また、ニューメキシコ州の地域文化や先端研究所・大学研究活動と地域活性化の関係を現地調査する。オーストラリアでは、クリエイティブ産業概念につながるcreative nationという国家発展ビジョンと関連政策、その後の文化産業とメディア技術融合などの活性化効果を現地調査する。台湾では、都市政策・都市デザインと伝統的文化や風水思想などとの関係を現地調査する。ドイツ・ルール地方では、欧州文化首都に選ばれた旧工業地帯の都市再生を産業遺産の文化的活用の事例として現地調査する。
平成30・31年度プロジェクト
居住問題の生成メカニズムに関する東アジア諸国の比較研究
研究目的
東アジアは雁行型発展の構造をもっていた。すなわち、先進国としての日本、キャッチアップする韓国、そして発展途上の中国という構図のもとで、種々の経済社会問題が伝播し、繰り返されていた。しかし、昨今、日本経済の低迷も相まって、韓国経済の躍進、中国経済の勃興により、東アジア国々間に存在していた雁行が崩れつつあり、経済社会問題の発生が同時性を強める一方である。殊に、居住問題を例にみれば、若者が安定した居住確保に四苦八苦している様相、高齢者が終の棲家を見つけるのに彷徨う姿などは、中国も韓国も日本においても同様に観測されている。そこには先進国としての日本、キャッチアップする韓国、そして発展途上の中国という構図はもはや存在しない。本研究は東アジア諸国が共通して抱える居住問題に焦点を当て、中国、韓国、日本に対してエリアスタディーズを行い、東アジア各国の特異性に留意しつつも、居住問題が生成するメカニズムを抽出していくことを目指す。その結果として、これまで居住問題に大して国別が行っていた政策対応に国際的価値基準に則った人類普遍的なものに、居住政策の科学化を推進していく。
東アジア企業のグローバル事業展開に伴うASEAN諸国・企業に及ぼす影響に関する研究
研究目的
グローバル化が進化しているが、タイ、ベトナムなどのASEAN諸国の国において、日本をはじめ、中国、韓国からの投資が増加している。ASEAN諸国における日中韓の現地法人は、それぞれ投資国の本国でのグローバル戦略とともに、その戦略の先兵としての活動をASEAN諸国で行っている。本研究ではまず、ASEAN諸国における海外直接投資先の企業行動について、日中間の比較の視点を交えながら行う。特に、多くのASEAN諸国の現地法人において中間管理者が育っていないことが指摘されているが、それら育成に対して日中韓で違いがあるのかを研究する。また、近年は企業の社会的責任(CSR)を望む声が高まっており、投資先においてもこれまでのように公害や不当労働等の問題を発生させることは許されなくなっている。そうした状況下、このCSRについても、それぞれ海外直接投資を行う国によって違いがあるのか、本国での調査とともに行う。これにより、グローバル化が深化した深層を、日中韓企業の投資国の投資行動から明らかとする。さらに、次なる進出先となるラオスやミャンマー、カンボジアに進出する際の手がかりを得る。
東南アジアの保健医療政策の検証・今後への示唆
研究目的
本研究は平成28年度より実施している、東南アジアの保健医療政策についての研究を継続して行うものである。この研究は研究対象国において政策評価を行うことでより効率的・効果的な保健医療政策とは何かを考察することである。なお、平成28、29年度はベトナムとカンボジアを対象としていたが、今回はそれらに加えてミャンマーも研究対象としている。なお、これらの3つの国は同じ東南アジアに位置するものの、その健康指標は大きく異なり、政策の焦点も異なっている。そこで、それぞれの国の背景にあわせて、以下の3つの研究を行う。まず、ベトナムについては、急速に進む高齢化(国連人口推計:2018年に7%、2033年には14%)を踏まえ、国民皆保険制度の財政的課題に着目する。次に、カンボジアにおいては、現在の最重要課題である5歳未満児の栄養失調児割合(2014年:約30%)の低下に焦点を当てる。最後に、ミャンマーについてであるが、ミャンマーの医療制度は十分ではなく、特に5歳未満児死亡率(出生1,000に対し72:2015年)、妊産婦死亡率(出生10万に対して200:2015年)は東南アジア地域の中でも悪い水準にあることを踏まえて、周産期医療に関する政策を検討する。なお、国民皆保険制度はカンボジア及びミャンマーもその導入を検討していること、カンボジアも数年後には高齢化社会への移行が始まるとされていることから、ベトナムの経験は、東南アジア諸国に重要な示唆を与える。また、カンボジアが直面する5歳未満時の栄養失調の問題は、新生児期の栄養不良が関連していると言われており、周産期医療の改善が急務なミャンマーにも関連する。よって、それぞれの国で現在最も重要な医療政策を詳細に検証することで、各国の医療政策を考える上での資料として提示することができるとともに、他国の経験からの重要な示唆を得ることが可能となる。
平成28・29年度プロジェクト
アジアにおける経済統合の深化と企業家ネットワークの形成についての研究
研究目的
経済成長の目覚ましいアジア地域で、現在、TPP、AEC、ACFTAなどの広域連携はもとより、二国間のEPAやFTAの経済統合が急速に進展している。このようなもとにあって、アジア各国は、製造業の衰退などの課題に直面する日本、急速な成長を見るもその経済発展プロセスにおいては多くの歪みを抱える中国、そして経済勃興期の真っただ中にあるベトナムなどに大分される。このような状況のなかで、本研究の狙いは基本的に三つである。その第一は、日本・中国・ASEANにおける企業家の形成メカニズムについて具体的な地域をとりあげ三地域を比較検討すること、そして第二は、ASEAN各国での中国企業、韓国企業にインタビュー調査を行い、進出日系企業との違いを明らかにすることである。そして三番目は、そのようなアジア各国の企業家たちによる地域間(国際間)社会的分業関係の進展がアジア各地域での経済統合発展のどのような契機となるのかについて、現地企業や進出外資系企業での検討を通じて実証的に分析を進めることである。
環太平洋経済連携協定(TPP)加盟国における日系企業の組織能力移転プロセスに関する研究
研究目的
2015年10月、環太平洋経済連携協定(TPP)が12カ国間で大筋合意された。加盟国は大きく、①経済先進国、②伝統的に農業や鉱工業に強みをもつ資源保有国、③新興国(開発途上国)に分類される。本研究プロジェクトは、上記③を対象にして、日系企業における組織能力の移転プロセスを明らかにする。新興国では社会インフラ-とくに工業基盤-が整備されておらず、制作的に他の加盟国からの海外直接投資を呼び込み、国内産業の育成に注力している。また日系企業もこれら新興国の潜在的な市場成長率に着目して積極的に先行投資し、生産ないし販売拠点をかまえている。しかし、産業別・企業別に比較してみると、日系企業の中でも新興国における能力移転の段階と径路に隔たりがある。大企業でも研究開発機能は移転できておらず、中小企業は技術移転の途上にある。また製造業では「グローバル統合(技術移転)」が重視されるのに対して、サービス業では「現地適応化」が先行する傾向にある。まずは日系企業の能力移転プロセスの現状とその特徴を確認する。また移転プロセスは、企業の成長プロセス-経営戦略-の差異を反映しているため、経営戦略の形成・実行プロセスとの関連において、組織能力の移転を促進する(あるいは障壁となる)諸要因を明らかにする。
東南アジアの保健医療政策の比較・検証
研究目的
本研究の目的は、東南アジア(特に、ベトナム、カンボジア)の保健医療政策の比較・検証を通して、より効率的・効果的な保健医療政策とは何かを考察することである。「持続可能な開発のためのアジェンダ2030(SDG)」において、国連開発計画は全ての国での国民皆保険制度導入を目標としているが、2009年に国民皆保険制度を法制化したベトナムは、財政面及び供給面での問題、保険加入方法の欠陥などによる加入率停滞等様々な課題に直面しており、カンボジアにおいては公的医療保険が存在せず、NGOが保健医療活動の中心を担っているのが現状である。これらの国々は、国家の財政基盤が脆弱であり、財政面での改善に加えて、公的医療保険を全面的に導入するためには医療制度や供給における様々な工夫が必要である。そこで、本研究では具体的に以下の2つの方法によって、効率的・効果的な保健医療政策を考える。まず、申請者らが以前からおこなっているベトナムの国民皆保険制度の研究を発展させ、制度や医療サービス供給面での課題をより明確にすることである。次に、カンボジアにおいて、NGOが実施する保健医療活動の効果を検証することである。これらより、ベトナムにおいては皆保険制度を成功させるためにはまず何を解決すべきかが明らかとなり、またベトナムの経験をカンボジアにおける公的医療保険制度の設計に役立てることが可能となる。加えて、カンボジアを対象とした研究からは、誰をターゲットにどのような方法で介入をすることが国民の健康状態を改善するために最も効率的かつ効果的かという示唆を得ることが可能となり、ベトナムの保健制度の見直しのためにも重要な資料となる。なお、この研究結果は歴史的、文化的に多くの共通点を持つ他の東南アジアの国々にとっても有益な情報となると考えられる。
平成26・27年度プロジェクト
環太平洋経済連携協定(TPP)が加盟国企業の国際経営に与える影響に関する研究
研究目的
環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る交渉が徐々に本格化してきた。交渉参加国及び参加予定国がTPPにかける思いも異なり、正式な加盟が締結された場合に相互補完、または真っ向からぶつかる分野も当然でてくる。但し、加盟国内での競争と協調は、非加盟国との関係からみれば、かなり優位性をもたらすようなものになるに違いない。本研究ではこのような視点に立ち、TPP加盟国間で構築される戦略的な枠組みは、加盟国企業の国際経営にどのようなメリットをもたらすかを明らかにする。同時に、加盟国同士で、競争し合っている分野においてそれぞれの企業が新たな枠組みの中で、互いにどのような戦略行動をとっていくのかについて比較研究を進めていく。
海外生産化の進展が大都市圏産業集積の地場産業に与える影響
研究目的
本研究は、大都市圏に存在する地場産業に焦点を当て、グローバル化が進む中で、地域経済と深く結び付いている地場産業に「新たな展開」は存在するのか、特に大都市圏に存在する地場産業は現在どのような展開を中心にして研究を進めたい。具体的には昨年まで研究してきた、東大阪の地場産業の一つである伸線産業の結果をふまえ、他地域、特に東京都大田区周辺を中心とする城南地域や、多摩地域等の大都市圏に存在する地場産業にも焦点を当て、これらの地域を比較しながら、大都市圏の地場産業が持つ問題や、今後の展開を考察するつもりである。
アジアにおける企業家群像の抽出と企業家ネットワークによる経済統合の深化に関する研究
研究目的
本研究の狙いは基本的に三つである。その第一は、日本・中国・ASEANにおける企業家の発生メカニズムについて具体的な地域をとりあげ三地域を比較検討すること、そして第二は我が国で製造業を担っている町工場誕生の経緯を何らかの方法で記録にとどめ、起業を志すあるいは事業承継を目指す学生にとって有用であるなんらかの報告書・教材を作成する(あるいはその準備作業に着手する)。そして三番目は、そのようなアジア各国の企業家たちによる地域間(国際間)社会的分業関係の進展がアジア各地域での経済統合発展のどのような契機となるのかについて、現地企業や進出外資系企業での検討を通じて実証的に分析を進めることである。
関西における文化資源の活用―信頼と共有のネットワークを軸に―
研究目的
歴史的に通観すると、様々な人材・物資・情報が集積し交流するハブステーションとしての関西のポテンシャルは高い。当プロジェクトは自治意識、文芸知識、地域政策、運搬物流、経営感覚などの観点から、越境するネットワークの実態を踏まえて研究分担者それぞれの専門的な立場からアプローチすることによって、関西における多様な文化資源の可能性とその活用の方途を探りたい。https://ouc.daishodai.ac.jp/ca_labo/project/post_4.html