商学ってなんだ?

生産者と消費者をつなぐ
「商学」の重要性とは。

商学科主任

松尾 俊彦教授

人と向き合い、人をつなぐ。
商人の役割を追究する「商学」の学び

江戸中期~明治初期頃、「北前船」と呼ばれる大阪―北海道間を航行し積み荷を各地で売買する商船がありました。その北前船の船頭は、生産者と消費者をつなぐバイヤーのような働きをしていたんです。私は、船で移動しながら商いを行っていた船頭にこそ商学のエッセンスが詰まっていると考えています。
世界のお金の流れを学ぶ経済学、企業の成長について考える経営学とは異なり、商学は生産者と消費者をいかにつなぐか、ということをさまざまな切り口から掘り下げる学問です。少し前までは、生産者が商品を生み出せば何でも売れるような時代でした。しかし、インターネットの普及やグローバル化が進み価値観が大きく変容した現代においては、消費者としっかりと向き合った上で商品を生産する必要があります。多様化した消費者のニーズを捉え商品開発に生かす一方で、生産者の思いをくんでプロモーションを行い、スピーディーかつ丁寧に商品を届ける物流についても考えなければいけません。北前船の船頭が、生産者と消費者の両者の立場に立って双方が満足する商売をしていたように、人と人をつなぐ商いという営みについて知るのが、商学の学びと言えます。

具体的な事例を通じて
「流通」と「マーケティング」を深く理解する

本学の商学科の特徴は、「流通」と「マーケティング」という2つの分野を学びの柱にしている点です。「流通ビジネスコース」では取り引きに伴う物の移動に着目し、小売・卸売・物流それぞれの知識を身につけます。どのような手段で目的の場所へ届けるか、いかに商品を管理するかということを学ぶコースです。「マーケティングコース」では、消費者ニーズの発掘、商品企画・開発、プロモーションなど、「誰にどのような商品をどれくらいの価格で」提供するかを深く追究していきます。そして「営業プロフェッショナルコース」では、流通とマーケティングをバランスよく学び、ビジネスに求められる知識・スキルを総合的に高めていきます。
どのコースも、生産者と消費者をつなぐ場面において、リーダーとして活躍できる人材の育成を目指してカリキュラムを展開しています。そして、実際の企業の成功例や失敗例といった事例を参考にしながら、商いを行う上での課題を考える力を養います。それと同時に磨いてほしいのが、商人に欠かせない「人の気持ちを理解する姿勢」です。人とのつながりを保ち、広げていく力の重要性を十分理解し、主体的に学びを深めていってください。

商学 私の原点

流通業界を支え、時代の変化に対応した労働環境の整備を目指して

高校や大学時代は、船乗りになることを目指しており、航海学や商船学を中心に学んでいました。ですが、世界一周の航海に出たとき、常に揺れる船の上での生活は自分には向いていないと感じ、研究・教育の世界へ足を踏み入れることに。これまで、主に日本国内の貨物輸送を担う内航船の船員や、港で働く港湾労働者が直面する問題を取り上げ、研究を進めてきました。
船員は高齢化が進み、若い人材の確保・育成が進んでいません。業界内でも人材不足に対する懸念の声が高まっていますが、具体的にどれくらい足りていないのか、どうすれば補うことができるのか、きちんと認識されていない側面があるように思います。すでに現在、港湾労働者不足が原因で、港で荷物の積み下ろしがスムーズに行えず、輸送費の高騰につながっています。法律上の問題も深く関わっており、簡単には制度改革が行えない中で、効果的な解決策を探ろうと試みています。