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授業の事例紹介

アクティブ・ラーニングの活用方法 ②「プロデューサー育成を目指した実践教育」

Pick Up Lesson Vol.86

アクティブ・ラーニングの活用方法
②「プロデューサー育成を目指した実践教育」

 企業連携型の授業展開と国境を越えた共同商品開発

徳島県立徳島商業高等学校 教諭 鈴鹿 剛

 徳島商業高等学校は、徳島県の商業高校の中心校でありながら5 年前までは、地域とのつながりが弱く、実践的な学習の機会があまりなかった。そこで、実践的な教育を展開するため、様々な実践的な活動を展開した。
 活動のポイントとしては、
 第1 段階:地域コンサルタントの育成
 第2 段階:観光ガイド・商品開発力を持った人材の育成
 第3 段階:Glocal プロデューサーの育成

 様々な活動に取り組む中で、平成27 年度に文部科学省よりスーパープロフェッショナルハイスクール研究校に指定された。また、連携先のポイントとして、上下関係になる企業ではなく相互理解ができる企業を選定するよう気をつけている。

 現在、情報処理科3 年生の授業では毎年8 社の地元企業などのホームページ作りに取り組んでいる。(2 クラス 1 クラスあたり4 社)ホームページを作成すると言うことは、企業は自社をしっかりと伝えないと、よいものはできあがらない、生徒は理解できないとホームページは作れない、という状況になるため、インターンシップ的な側面を持つことができている。

 徳島商業高等学校では、商品開発活動やホームページ支援活動に加え、観光ビジネスの教育の仕組みを平成27 年度より研究を始め、平成28 年度より学校設定科目「観光ビジネス」の授業を開始した。観光を学ぶため、京都・沖縄・シェムリアップと交流するとともに、近隣都市である淡路島での地域活性化策にも取り組んでいる。

 本校では、ドイツ、ニーダザクセン州シェーラベルク職業学校及びカンボジア、プレイベン州カンボジア−日本友好学園と友好協定を結んでいる。その中で、グローバル人材を育てるため相互訪問や共同商品開発を行っている。詳しくは後述する。

 ここで、実践的な学習を取り組み始めた平成23 年度の取り組みから、簡単に紹介する。平成23 年は3 月11 日に東日本大震災が発生した。徳島商業高等学校では、徳島県教育委員会からの要請を受ける形で、現女川小学校(旧女川第二小学校)との被災地交流支援活動を開始した。一番最初は、同校の文化活動である「さざなみ太鼓」を復活させるための活動、保護者や子どもたちにやる気を取り戻すためのアクセサリー作り(作り方を徳商生が教え、保護者や児童が作ったアクセサリーを徳商生が販売し、必要な文房具などに換えて送るという活動)、アルバム作り(女川では家庭の写真のほとんどが流出したため、学校に残っている写真を整理し小学生の家庭に届ける活動)を行った。現在は、この活動を発展させESD を意識した商品開発活動に発展している。

 平成24 年度からはGoogle 社と連携して、地域企業のホームページ作りのサポートを行った。当初は多くの企業を募集し、講習会を実施する形で行った。現在は、情報処理科の授業に引き継がれ、コンサルタントを行いながら、ホームページを作成し、SEO(最適化)を実施、マニュアルを作成し企業に引き継ぐ形で行っている。

 そして平成25 年度からは、カンボジアにあるカンボジア−日本友好学園と連携し、共同消費開発を行っている。きっかけは全くの偶然であった。私たちは平成23 年から被災地交流支援活動を行っていたが、その際にカンボジアへの支援活動をしている人がおり、カンボジアの学校が日本からの支援が減るのではないかと不安に感じている。またポルポト時代からの支援者の年齢も上がってきており、自立を少しずつでも模索したいので、一度カンボジアに来て欲しい、との要請を受けた。

 訪問を行い、カンボジアの治安やカンボジア−日本友好学園の状況を確認後、学校として連携を決めた。具体的に行った内容としては、JICA と連携しての「商品開発のための実習室整備」「実教出版商品開発教科書のクメール語翻訳」「月1~2 回程度の共同商品開発テレビ会議」「現地の学校に日本人を派遣し週2 回の商品開発授業」「年2 回現地への高校生派遣」「年1 回のカンボジアの教員・高校生受入」などである。その際には、日本・カンボジア両国において両国生徒によるマーケティング調査の活動や商品開発の意見交換、試作などを行った。

 生徒をプロデューサーに育てるためには、「本物」の体験が不可欠であると考えている。市場流通できる商品開発、海外の市場を実際に体験すること、さらに知的財産権についても実際に体験することを目的として、「商標登録」「国際商標登録」も生徒たちが学び、考えながら、弁理士の協力の下、申請を行うことができた。国際商標については認可されれば国内でも教育からの申請としては珍しいケースとなる。通常、知的財産権については侵すことの方が多いと思われるが、このように自分たちで守るべきものを取得することにより、意識が大きく変わる。

 現在、私たちの取り組みは文化庁に納められる映画になったり、JICA カンボジアの表紙に取り上げられたりと両国を教育という視点からつなぐ架け橋として注目されている。さらに、両国でこの取り組みをした生徒たちは、それぞれ新しい進路を確保し、活躍し始めている。

 昨年12 月、本校はカンボジアにある在カンボジア日本大使館において、在カンボジア日本大使、カンボジア教育省長官立ち会いの下、友好協定を締結した。

 本校の取り組みは本格的にスタートさせてから5 年ほどであり、まだまだ未熟なものではある。しかし、本原稿内のパワーポイントのほとんどや、写真のほぼ全てを生徒が作成したり撮影したものを使用できるようなったのは、取り組んでいる教育の中から少しずつその成果が現れてきたのではないかと感じている。私たちの取り組みが何かの参考になれば幸いである。

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