高校における実践報告 <br>「『主体的・対話的で深い学び』の実践における、指導と評価 の一体化に向けた研究」 | 授業の事例紹介 | 授業の充実と学びの実践 | 起業教育研究会 | 起業教育 | 大阪商業大学 - Osaka University of Commerce

授業の事例紹介

高校における実践報告
「『主体的・対話的で深い学び』の実践における、指導と評価 の一体化に向けた研究」

Pick Up Lesson Vol.105

高校における実践報告
『主体的・対話的で深い学び』の実践における、指導と評価 の一体化に向けた研究

宮崎県立都城商業高等学校  教諭 黒木 庄吾

1 はじめに

⑴ 学校紹介
 本校は今年で118年を迎える歴史と伝統のある商業高校として、地元で信頼され多くの卒業生が宮崎はもとより全国で活躍している。
 令和4年度から学科改編が行われ、「商業マネジメント科」「情報ソリューション科」の2学科で生徒募集が行われた。2年生から商業マネジメント科は経営管理類型と地域共創類型へ、情報ソリューション科は情報数理類型と情報活用類型となり、本校は2学科4類型の学校となった。「都商ならではの学び」を掲げ、基礎力・応用力・実践力を身につけた生徒の育成を目指している。

⑵ 教育課程研究指定校
 本校は平成30年度、令和元年度に教育課程研究指定校となった。研究主題として学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の実践における、指導と評価の一体化に向けた研究とした。今回はマーケティングと課題研究を科目設定し研究を実施した。今回の報告書はマーケティングを中心に報告を行う。
vol.105_1.png

2.マーケティング

⑴ PDCAサイクル
 マーケティングの授業では2クラス4名で担当し、単元ごとに教材作成を割り振った。週に1回研究担当者会を実施し、教材の研究や評価の在り方を検討した。単元ごとに「学習計画」「授業」「評価」「振り返り」の流れでPDCAサイクルを回し、試行錯誤ではあったがブラッシュアップしていくことができた。

⑵ 観点別学習による評価
 平成31年1月21日に出された「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」を受けて、マーケティングにおける学習評価の在り方を見直した。


  観点別学習状況の評価の考え方

 ■ よりよく学ぼうと意欲をもって学習に取り組む
 (評価の意味、優劣を付けるものではない、生徒の実態に応じて)

 ■ 各章単元ごとに、3観点で「A十分満足できる」「Bおおむね満足できる」「C努力を要する」を付け評価
 (知識・技術)(思考・判断・表現)(主体的に学習に取り組む態度)

 ■ 評価のタイミングは単元のまとまりごと(記録に労力を奪われることのないようにする)

 ■ 各章単元ごとに、生徒へフィードバックさせる(次の章単元の学びへ向かわせる)

 ■ マーケティング担当者会を開き、評価の方針を教師間で共有(ルーブリック評価等)
 


⑶ 主体的に学習に取る組む態度
 「粘り強く学習に取り組む態度」は観察評価と議事録のような記録シートで、グループ学習の内容を可視化し評価している。それ以外にも様子を見ながら座席表を活用するなど総合的な判断ができるよう工夫している。「自ら学習を調整しようとする態度」では授業プリントを総合的に見ながら授業の振り返りで判断している。自ら学習を調整しようとする態度の評価が研究で苦労した内容の一つである。
 授業プリントで「A」「B」「C」の評価を行った。一番の課題は「C」評価の生徒である。振り返りもできておらず、自ら調べた内容も薄く授業への関心も低い状態であった。早い段階の手立てが不可欠で有り、フィードバックを行い対応してきた。しかし「C」→「B」になるまでに多くの時間がかかり、クラスに数人存在することから時間的にも労力的にも大きな負担となる。
 しかし、主体的に学習に取り組む態度の評価が改善することは「知識・技能」「思考・判断・表現」の改善にも繋がることから「C」評価の生徒の手立てを考えることは重要なことである。

⑷ 思考・判断・表現
 思考・判断・表現ではワークシートを中心に考えさせる問いを設定している。「経営者の視点から考えよう」「これまで学んだマーケティング手法を用いて考えよう」「どのように改善したか」などティーチングのように答えを与えるのではなく、コーチングで自ら気づき、答えを導き出すような工夫した問いを考えた。

⑸ 知識・技能
 知識・技能では定期考査を実施せず、単元テストに切り替えた。採点は相互採点を実施し、教科担任が採点に追われることがないよう工夫した。採点ミスにならないよう、点数を均一するなどした。

⑹ 単元による評価
 生徒がイメージできるように100点満点になるように換算し、ABCの評価、評定まで出力できるように関連づけた。単元終了後、速やかに個票で生徒に配布し今後の学びについて記述させるなど次回の単元に繋がる工夫も実施した。vol.105_2.png

3.成果と課題

⑴ 観点別学習評価
 知識・技能では単元テストを中心に評価を実施した。全ての生徒が定期テストではなく単元テストが取り組みやすいと高い評価をしている。定期考査に比べて範囲が狭くテスト勉強もしやすいことが要因である。しかし、回数の多い単元テストは慣れが生じてしまい後半テストの平均点が落ちるなど単元テストに対する気持ちの維持は課題となった。
 思考・判断・表現ではワークシートを中心に評価をしているが、生徒の思考を妨げないように必要最低限の情報を与えるよう工夫改善を行った。知識や技能を活用して思考・判断・表現する必要があるが、生徒によっては知識・技能の範囲で止まっており思考させるための「問い」については今後も研究していく必要がある。
 主体的に学習に取り組む態度では二つの側面をルーブリックに落とし込んで評価を実施した。情意方略では、グラフで読み取れるように「できる」が「とてもできる」に変化した生徒が20%上昇している。しかし、「あまりできない」は変化がなかった。
 学習方略では、情意方略同様に「できる」が「とてもできる」に変化した生徒が20%上昇している。「できない」「あまりできない」の変化がなかった。情意方略、学習方略ともに「できない」「あまりできない」生徒に対しての手立てや支援が上手くいっていないことが考えられる。同じ方法での支援は限界があり、生徒によって方法を変えるなど工夫が必要である。主体的に学習に取り組む態度の評価が低い生徒は他教科でも同様の傾向が見られるため一科目だけでなく全ての教科・科目で対応することで効果的・効率的に支援ができると思われる。
vol.105_3.png

⑵ まとまりで見る観点別評価
 単元やまとまりの中で、各評価には連動性があることがわかった。知識がないと思考することが難しく、そこからの主体性はうまれないのである。要するに「CAA」や「AAC」という評価は出てこないことになる。
 90%以上生徒が各単元の観点別評価は妥当であるとアンケートで答えており、評価方法に関しては信頼できる評価となった。
 課題としては、評価のカッティングポイントの判断になる。「A」と「B」もしくは「B」と「C」の評価の分かれ目の判断が難しく生徒に説明できるよう明確にしておく必要がある。また、評定に換算した場合「CCC」の生徒は1~3に当てはまることになり、幅が広すぎて評価の違いが分かりづらいことになる。

4.おわりに

 今回はマーケティングを中心に報告しているが、実際はもっと多くの科目を担当しており、他の科目も同様に同じ労力をかけて評価できるのかというと難しいと予測できる。どのように労力に追われずに学習評価を続けていくのかが大きな課題であり、今後も研究を続けていく必要がある。
 評価が「C」の生徒は全ての科目で同様の傾向があり学校全体がチームとなって進めて行くことが大切である。
 今年度から新しい観点での評価が始まり、各校で様々な研究が進められている。大切なのは職員一人一人の評価に対する意識を変えることである。本校でも生徒にやる気を起こさせる学習指導や学習評価を学校の組織として研究を積み重ねて行きたい。

大阪商業大学 総合交流センター

〒577-8505 
大阪府東大阪市御厨栄町4-1-10

TEL 06-6785-6286
e-Mail react@oucow.daishodai.ac.jp