授業の事例紹介
高校における実践報告「ICTを活用したこれからの授業&探求型学習」
Pick Up Lesson Vol.100
高校における実践報告
ICTを活用したこれからの授業&探求型学習
大阪市立大阪ビジネスフロンティア高等学校 教諭 堀 学武
1 はじめに
大阪市立大阪ビジネスフロ ンティア高等学校は平成24年4月に新しいタイプの商業高 校を標榜し、東商業・市岡商 業・天王寺商業高校の3つの 伝統ある商業高校を再編統合 することにより誕生した。教育目標は高校・大学の7年間 を見据え、ビジネスの3言語である会計・情報・英語の教育に力を入れ、グ ローバル社会で活躍するビジネスパーソンを育成することになっている。
ここでは、急速に変容していく社会に対応する人材の育成を行うために、積極的に新しいことへチャレンジしている本校の取り組みの一つとして、ICTを活用したこれからの授業と探究型学習について紹介したい。
2 本校の探究学習・起業教育
本校の探求型学習は一年より高大接続科目を設置し、連携大学教授の執筆 テキストを利用したビジネスに関する基礎的な学習をはじめ、昨今の諸問題 に対してのディスカッション、プレゼンテーション、ディベート、グループ ワークなどを行い、様々なビジネスコンテストに参加するなど、大学水準の 授業を先取りした授業を行っている。
その中で、「あずさ監査法人」、「ミレニアムダイニング」、「NPO法人JAE」と連携して「ビジネスゲーム」を実施している。この授業では商品企画、原 価計算、ターゲット分析、意思決定の分析など産業界のプロと関わり、またフィードバックをもらうことでより実践的な学習を行っている。
3 新型コロナウイルス感染症による授業形態の変化
新型コロナウイルス感染症による影響により従来のような授業は行えなくなった。緊急事態宣言に伴う休校、グループワークの禁止や、ソーシャル・ディスタンスの確保などの影響である。
そこで本校では、ICTを活用し、生徒達の学ぶ機会を損なわず、従来のように経験学習ができる授業を実施できないか考え、行い、検証を行うこととした。
4 ICTを利用した授業の実践
まずはじめに行ったのはClassiによる課題配信と、臨時登校日の実施である。Classiは教育授業サポートツールであり、本校では平成29年度より導入し、利用している。様々な機能があり、導入後活用を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症流行後に一層利用度が高まり、現在も活用が活発なツールのひとつである。
分散登校の実施では、これからどのように授業を行っていくか、ICTツールの利用のしかたなどの説明を行った。現在ではズームでの授業や、Classiでの課題配信、提出などはスムーズに行えるが、その当時は慣れていないこともあり、やはり説明が必要であった。
次に実施したのは、ズームによる遠隔授業である。最初の授業では授業に参加してきた生徒も全員ではなく、繋がらず参加できない、画面が映らない、音声が聞こえないなど、授業としては成り立ってはいなかった。他にも参加してくるタイミングがずれることにより授業開始のタイミングが難しかったり、ズームでは時間制限(40分)があったりと、なかなかうまくはいかなかった。現在では、生徒達も遠隔授業に慣れたことや、ズームではなく、Google Classroom利用による、meetを利用することで、ほとんどの問題が解決している。
You Tubeを利用して、授業動画を配信するなども行った。この取り組みは特に簡単にはいかず、動画の撮影や編集の手間がかかるわりに、そもそもわかりやすい授業とはいえなかった。これは実際の授業とはやはり違い、教員側にノウハウがなく、急ピッチで行ったことが問題であった。他にも生徒達が見たくなるような工夫が必要であったり、アップロードの手段や、再生リストのとりまとめ、ネットワークの問題など、問題が山積みであった。
5 これからの授業とICT
ICTを利用した授業を行ってみて、様々な問題に直面し、うまくいかないこともあったが、利点も沢山あった。またその時の経験や内容が、現在の授業に生かされている。
ClassiなどのWebツールを利用した課題の配信や学習はほぼ通常通りの授業展開が行える現在でも実施し、反転学習の実現、効率化、生徒達の学習障壁の緩和、学習時間の短縮による放課後の時間確保などが行えている。YouTubeでの授業動画も引き続き続けており、教職員の技術の向上はもちろんのこと、撮影や編集、オンライン環境の整備も進み、学校に来ることができない生徒の学習補助に役立っている。特にズームやmeetなどのツールは非常に便利であり、産学連携教室の実施をオンラインで行うや、離れた場所との交流なども行え、あらたな授業の形をもたらした。
昨今、様々なことがめまぐるしく変化していく世の中である。その中で授業の形も変化し、対応していく必要がある。今の世の中ICTツールは必須となり、スマートフォンやタブレットなどはもう文房具と同じレベルにきている。このようなICTツールを利用し、これからもどのような授業を行うべきなのか、利用できるICTはどのようなものがあるのか。実施している授業の効果はどうなのか。比較や検証を怠らず、よりよい授業を実施していきたい。